初任者研修2日目

  1. 自己紹介 〜10:45
  2. 老化の理解 10:45〜14:00
  3. 障害の理解 14:00〜15:00

1.自己紹介

講師:下渡 早人

感謝の反対とは

感謝の反対とは?→当たり前
介護で自立支援の意味を把握するキーワード

例:健康→健康であることが有難い
自律(無意識に人は選択と行動をする)

生きていること自体が当たり前になっている
→介護が必要な対象は、当たり前のことができなくなっている
上記意識していないと本人の気持ちに気付きづらい

専門職に必要な気づき

1.小さなことが積み重ねでストレスになる
2.専門職は小さな気付きができて、それがどのように作用を及ぼしているかが分かる

例:一つの出来事で怒る利用者→日頃無意識の内に我慢していたことがたまる

最初に本人から都度都度希望を聞く

当たり前を排除することはできない→減らすことしかできない

利用者は本来自分でやっていて当たり前だったことを人にやってもらう
自分自身でなければ全ての当たり前を遂行することはできない

→自分でできる部分は自分でする方向で支援する

自己紹介はコミュニケーションツール

利用者でも最初は警戒されることもあるので
最初の挨拶で話題のフックを掴んで信頼を得る

→高齢者は話を聞かされるのが苦手
頭の中でようやくすることが出来なくなってくる
→こちらが聞く力を持つ

老化の理解

Aging process of close up beautiful adult woman. Isolated on white.

老化に伴う心身の変化や疾病について生理的な側面から理解
高齢者が起こしやすい病気や疾病、心理状態

病歴と既往歴の違い

病歴:現在持っている病気→医療職管轄が多い
既往歴:過去にもっていた病気、現在は治っているor安定→介護管轄
脳血管疾患・心疾患・骨折

老年期の定義

老年期の定義→制度などを適用する対象者をはっきりさせるため
WHO→65歳以上を老年期と定めて統計集める

日本は長寿世界1位
平均:84.2歳
男性:81.5歳 世界3位
女性:87.6歳 世界1位

健康寿命(健康的に生活できる寿命)
男性:72歳
女性:74歳

長寿国の特徴

  1. 全国民が最低限度の文化的な生活を送れる制度を整えている
  2. 誰でも医療を受けられる
  3. 環境美化、衛生が整えられている

※豊かな国が長寿国となる

ただ寿命を長くするのではなく、健康寿命を延ばす

老化による心理と行動の理解

・高齢者を個人として理解する視点
ステレオタイプ(集団に対しての決めつけ)的な判断はよくない
エイジズム(年齢差別)につながる

・老化の個人差が大きい

・社会的な影響が大きい
→葬式の参加が増えた→次は自分の番かというネガティブな思考になる
体力の衰えとともにコミュニケーション機会も失われ、喪失体験も増える

・経験によって個人差がある

尊厳を捨ててでも介護を受けないと当たり前のことが出来ない状況であることを意識する

高齢者の症状・疾患の特徴

高齢者の症状・疾患には

  1. 慢性であるものが多い(生活習慣病や血管系)
    複数の専門職と関わることで病気と付き合いながら生きる
  2. 複数の疾患がある
    薬の飲み合わせ、飲み忘れがないかを注視
  3. 通常の症状ではないことがある
    体力低下が原因で熱が出ない、痛みを感じないということが発生することがある
    →気になる症状がある場合は医師に相談

などの特徴がある。

腹痛

・腸閉塞

強い痛みが現れる

・消化性潰瘍

痛みが現れにくいので注意

・大腸腫瘍

血便や便秘などがサインとなることが多い

筋肉

・慢性疼痛

数週間に渡って関節や節々の痛みを訴える

・変形性関節症

股関節に現れる
先天性の場合もあるが、主な原因は姿勢の変化や肥満

・関節リウマチ

リウマチ熱が原因。全身に走ることで関節の変形を起こす

・腰背部痛

骨粗鬆症 骨が骨折しやすくなる(身長減少、姿勢の変化)
力を入れてケアすると圧迫骨折の原因に

浮腫(むくみ)

心臓、腎臓、低栄養
→静脈血が心臓に戻す力が弱いことで発生
アルブミンを低栄養を測る指標とし、栄養指導を行う

便秘

・器質性の便秘

腸の病気が原因

・器能性の便秘

タイミング・プライバシーのなさなどの心因性
→高齢者の便秘要因として多い

下痢

・ウィルス性の下痢

ノロウィルス、二枚貝の食中毒

・細菌性の下痢

MRSA―メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
薬剤が効かない耐性を持つ
抗生物質治療歴が多い人によく見られる

・感染症以外の下痢

宿便―便が固くなって肛門と腸付近で栓になって排便を阻害
→排泄補助の後は、逆に下痢のケアが必要

誤嚥

急性喉頭蓋炎―食物が気道に入らないよう蓋をする喉頭蓋の炎症
最悪気道閉塞によって死に至る

誤嚥リスクのある食べ物

大きい、噛み切りにくい、噛み砕くとバラバラになる

誤嚥リスクの少ない食べ物

とろみのある食べ物、ゼリー
飲み物もゼリー状にすることで誤嚥防止

生活習慣病

何をもって生活習慣病とするかという明確な指標がない
保険会社や医療施設によっても異なる

代表的な生活習慣病

代表的なものは糖尿病、高血圧、痛風
→脳血管疾患、心疾患、癌
肝炎、骨粗鬆症、動脈硬化症も

もともとは4大疾病を定めていた
(癌 心疾患 脳血管疾患 糖尿病 2000〜2010年)

→精神障害が加わり5大疾病に

がん・脳卒中・心筋梗塞で3大生活習慣病と明確化(2015年〜)

生活習慣病のサイン

糖尿病
多飲多尿→体重減少→合併症(網膜症・腎症・神経障害)
1型(インスリン依存型)先天性でインスリンを体内生成できない
2型(インスリン被依存型)中高年で発症95%

脂質異常症
閉鎖奥性動脈硬化症

運動系の病気

大腿骨頸部骨折
→転倒

黄斑変性症

慢性閉塞性肺疾患(COPD)→HOT(在宅酸素療法)
タバコの吸いすぎ

肺結核の後遺症

慢性腎不全
→糖尿病腎症による発症がほとんど
透析が必要

尿路感染→高齢者の原因不明発熱の理由1位

消化器系

肝硬変・肝炎逆流性食道炎など

循環器系

心不全→虚血系心疾患が最多

脳・神経・精神系

脳血管疾患(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)

後遺症:片麻痺、感覚障害、失語、構音障害、失調、認知症
パーキンソン病

介護保険の特定疾病

40〜65歳の被保険者が要介護認定を受ける条件となる疾病
癌、リウマチ、筋萎縮性即索硬化症、後縦靭帯硬化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症等

障害の理解

障害の定義とは、障害者基本法第2条に基づき
障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。) その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものを指す。

国際障害分類と国際生活機能分類

障害者を定義する考え方について

ICIDH(国際障害分類)

病気→機能障害→能力障害→社会不利

他社の手助けが必要な能力障害を基本とする考え方

ICF(国際生活機能分類)

ICIDHから生活機能というプラス面からみるように視点を転換し、さらに環境因子等の観点を加えた考え方

例:心因性の症状から生活が成り立たない引きこもりに対する判断等

環境因子、個人因子による発症

視覚障害

視野
視力
焦点

の3要因に分かれる

白内障

水晶体がシエ奥濁ることにより司会がぼやける
先天的な症状の場合はメガネやコンタクトにより屈折異常を矯正

緑内障

失明原因第1位
何らかの原因によって眼圧が上がり視神経の機能が低下

網膜色素変性

遺伝性疾患による夜盲が初発症状であることが多いといわれています。夜盲とは、映画館のような暗いところで見えづらい状態で、鳥目ともよばれる

病状が進行すると視力低下や色覚異常が生じ、最終的には失明

糖尿病網膜症

糖尿病の合併症として発症する疾患。
腎症や神経障害とともに糖尿病の三大合併症のひとつとして知られる。
糖尿病では血管障害が引き起こされるが、これに関連した網膜病変。

ベーチェット病

全身のさまざまな部位に炎症が繰り返し生じることが特徴的な病気で、視覚にも影響を及ぼす。
免疫のはたらきが過剰になって自身の体の組織を攻撃してしまう“膠原病(こうげんびょう)”の一種と考えられているが、現時点で明確な発症メカニズムは解明されていない。

視覚障害者介護の注意点

聴覚に対して敏感なので、大きな音で驚くことがないよう配慮

聴覚・言語障害

聴覚に影響の出る障害について主なもの

聴覚障害

■聾
全く聞こえない状態

■難聴
伝音性難聴 外耳から中耳に問題があることで発症
感音性難聴 内耳から脳神経に原因があることで発症

言語障害

■構音障害
器質性構音障害
運動性構音障害

■失語症
脳の言語機能が破損することによって起こる
運動性:読む、聴くは出来るが書く、話すがスムーズに行えない
情報の入力は出来るが情報の出力が苦手

感覚性:書く、話すは出来るが読む、聴くは苦手
情報の出力は出来るが入力が苦手

聴覚障害者介護の注意点

・症状に該当する動作を行うことを求めない
・口の動きをはっきりと見せて話す
・話す内容について順を追って説明して会話

肢体不自由

身体が麻痺して動かなくなっている状態

■片麻痺
右半身が動かない
脳血管疾患が主

■対麻痺
下半身が動かない
脊髄損傷

■単麻痺
1肢(右半身のみ、左足のみ)
脳性麻痺(小児麻痺)

■四肢麻痺
体全部動かない
脳血管麻痺、脊椎損傷、脳性麻痺

内部障害

心臓機能障害に対する理解
疾患の重症度も考慮

■心臓(虚血性心疾患)
ペースメーカーなどを埋め込んで生活

■腎臓
透析が必要になる

■呼吸器
COPDなど 息切れしやすく疲れやすい

■膀胱
自分で排泄することが難しく、カテーテルを利用

■直腸(ストマ―)
腸閉塞などで便が出ない場合、人工肛門などを利用して排泄

知的障害

IQ数値を指標として判断

軽度:69〜50
中度:49〜35
重度:34〜20
最重度:19以下

身辺自律の度合いに比例

代表的な精神疾患

■統合失調症
妄想によって日常生活や社会生活に支障をきたす
認知機能や作業能力の低下
病気であると自覚が出来ない

■うつ病
精神的な負担により気分が落ち込む
全てマイナス方向に考える
「頑張りましょう」は禁句

■依存症
最初は好きで飲んでいたが
止めると死ぬ、不幸になるという発想に

■その他(パーソナリティ障害など)
神経症性障害
パニック障害など、対人コミュニケーションに支障をきたす症状など