今となっては日本が世界へ誇る伝統を体現する日本酒。
国内には現在1万5000もの銘柄が生産されており、有名な「大関」や「獺祭」といったブランドの他にも、各地方豊かな環境で醸された地酒が多数存在します。
今回はその中から、岩手県でその歴史を守り続ける酒造、月の輪酒造が生産する名酒を紹介します。
月の輪酒造とは
月の輪酒造は、岩手県紫波に蔵元を構える酒造です。
平安時代、「前九年の役」で陸奥の反乱を鎮圧した源氏の父子。
その際兵士・平馬の飲用水を得るために掘った池へ映った金色の月を吉兆としたという伝承に基づき名付けられたこの酒造は、明治19年から130年間続く伝統を持ちます。
創業当時から続く原料へのこだわり
「企業」ではなく「家業」として酒造りを行う月の輪酒造。そのこだわりは、原料となる水と米から徹底されています。
使用する米は地元岩手で育てられた米を主体とした独自ブレンド米。
古くから交流のある地元農家と連携し、毎年の米の仕上がりと、それを用いて生まれた日本酒の味わいを共有しています。
そこからより日本酒に会う米の品種改良と、より米の特徴を活かした醸造工程を追求し合う関係を築いています。
また仕込み水は敷地内の井戸から汲み上げたものを使用し、純粋で高品質な原料のみを用いて醸した日本酒は、ほとんどが「純米酒」以上の特定名称種となっています。
固執はしない
地元農家との関係を大切にしつつも、目指す味に近づけられる原料であれば他の産地の米もブレンドに使用し、とことんまでユーザーの納得する味を追い求めます。
単純に地産地消へ固執するのではなく、時代と共に柔軟に形を変えて、その時々のベストを生み出すことが、1世紀以上の歴史を守り抜けるる秘訣であるともいえます。
金賞受賞の大吟醸「月の輪 大吟醸」
引用元:jizakeya-syoukane.co.jp/tukinowa.html
山田錦を磨き40%まで精米し、そのすっきりしているのにしっかりと余韻も残る味わいから、全国新酒監品評会で金賞を受賞した「月の輪 大吟醸」
醸造にかかる手間暇から、現在Amazonなどの通販でも出回らず、一部の通販や専門サービスのみで取り扱う希少銘柄となっています。
伝統を踏襲しつつ新たなチャレンジを続ける
130年もの間、5代に渡って続く酒造の伝統を受け継ぎ、確かな原料選定と醸造知識を持つ杜氏(とうじ)である横沢裕子氏。
彼女の指揮による丁寧な酒造りは、時代の移り変わりとともに新しく生まれてくる、月の輪酒造ならではの製品作りにも活かされています。
中でも地元の名産であるもち米を使った酒造りは、それまで酒造に不向きであるとされていた概念を覆し、100%もち米で醸造した「もちっ娘」は他の大吟醸や純米酒と並ぶ人気商品となりました。
また酒造として経営する前の家業であった「米麹」を使用したジェラートも人気です。麹の糖化によってほんのりと甘いこのジェラートは、蔵の敷地内にある直販店「わかさや」にて提供されています。
味噌などのイメージがある麹からは想像もつかない上品な甘みに驚きを覚え、そこから日本酒に興味を持つようになったファンも多いといいます。
お供にはチーズや甘辛い肉料理など
すっきりとした飲み口の月の輪大吟醸は、味の主張が強いチーズの味噌漬けや、やわらかく煮込まれたとろとろ軟骨などがよく合います。
食材のクセの強さをすっきりと中和しながらも、大事なところは引き立たせるバランスの良さがあり、箸と杯を動かす手が止まらなくなること請け合いです。
なるべく教えたくないけど知ってほしい
引用元:https://www.tsukinowa-iwate.com/
130年をかけて常により良い酒造りを追求し、他に作ることの出来ない味わいを楽しむことの出来る月の輪酒造は、日本酒が”SAKE”として世界共通語となった現代にもっと知られるべき蔵元だといえるのですが、どこか自分だけのものにしておきたいという気持ちも湧いてきます。
しかし伝統を踏襲しつつ、常に様々な角度から新しいことへのチャレンジを続ける月の輪酒造のことです。これからもずっと守り抜いてきた技術を更に昇華させながら、ファンの「こういうものを口にしてみたい」という気持ちにも、思いもよらない角度から応えてくれるでしょう。
知られ過ぎたくはないですが、おすすめです。
日本酒のサブスクリプションサービス、「saketaku」では、今回紹介した蔵元「月の輪」の他にも日本全国の酒造と連携し、入手困難な希少銘柄に託された伝統とフロンティア精神を伝え続けています。